睡眠時無呼吸症候群について
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome=SAS)とは、睡眠中に呼吸が10秒以上停止する状態が何度も繰り返される病気です。この状態が続くことで、睡眠の質が低下し、日中の眠気や集中力の低下を引き起こすほか、放置すると深刻な健康リスクを伴うことがあります。
私たちは眠っている間、「レム睡眠(浅い眠り)」と「ノンレム睡眠(深い眠り)」を約90分周期で繰り返しています。ノンレム睡眠時には体がしっかりと休息をとり、脳の疲労を回復する重要な役割があります。しかし、睡眠時無呼吸症候群の患者様は、ノンレム睡眠中に呼吸が止まることで頻繁にレム睡眠へ移行し、睡眠の質が著しく低下してしまいます。
この影響により、次のような症状が現れることがあります。

日常生活への影響
日中の強い眠気により仕事や運転中の注意力が低下し、ミスや事故のリスクが高まります。また、集中力が続かず作業効率が落ちることや、記憶力の低下によって学習能力や認知機能に影響が出ることもあります。慢性的な疲労感が続くことで、生活全般において活力が失われてしまうことも少なくありません。
身体への影響
睡眠中の呼吸停止により血圧が上昇し、高血圧のリスクが高まります。それに伴い、狭心症や心筋梗塞、不整脈などの心疾患の危険性も増大します。また、脳への酸素供給が不足することで脳卒中を引き起こす可能性もあります。さらに、睡眠の質が悪化すると体内の代謝バランスが崩れ、糖尿病の悪化につながることも知られています。
呼吸が停止している間、体内の酸素濃度が低下し、全身が酸欠状態となることで、さまざまな臓器に影響を及ぼします。特に循環器系の病気と深く関わっており、放置すると命に関わる病気を引き起こす可能性があります。少しでも異変を感じた場合は、早めに検査を受けることが大切です。
このような症状がある方はご相談ください
- いびきが大きい、または家族から指摘された
- 寝ている間に呼吸が止まっていると言われたことがある
- 日中、強い眠気に襲われることが多い
- 朝起きたときに頭痛がある
- 寝ても疲れが取れず、熟睡感がない
- 夜中に何度も目が覚める
- 集中力が低下し、仕事や勉強に支障を感じる
- 最近、血圧が高くなってきたと感じる
- 運転中に眠気を感じることが多い
これらの症状に当てはまる場合、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。 お一人で悩まず、ぜひ当院へご相談ください。適切な検査・治療を行うことで、より良い睡眠と健康的な生活を取り戻すことができます。
睡眠時無呼吸症候群の検査
睡眠時無呼吸症候群の診断には「PSG(終夜睡眠ポリグラフィー)」と呼ばれる特殊な検査を行います。この検査では、一晩の睡眠の状態を総合的に評価し、無呼吸の頻度や影響を詳しく調べます。
検査内容
検査では、頭や顔、胸、腹部、足などに電極やバンドを装着し、以下の項目を測定します。
- 脳波(睡眠の深さを確認)
- 眼球運動(睡眠サイクルを測定)
- 筋電図(顎や四肢の動きを記録)
- 呼吸活動(鼻と口の空気の流れを測定)
- 心電図(心臓の働きを評価)
- 酸素飽和度(血中酸素濃度を測定)
- いびきの音(いびきの強さや頻度を記録)
検査費用
簡易検査(自宅で行うタイプ)の場合、健康保険適用後の自己負担額目安です。
簡易検査 | 約3,000円程度 |
治療方法
睡眠時無呼吸症候群は、適切な治療を行うことで、正常な睡眠を取り戻し、健康的な生活を送ることが可能です。主な治療方法は以下のとおりです。
① CPAP(経鼻持続陽圧呼吸療法)
鼻マスクを装着し、空気を送り込んで気道を広げる治療法です。特に中等度~重症の患者様に効果的で、睡眠時の無呼吸を大幅に改善できます。
② マウスピース療法
口腔内にマウスピースを装着し、下顎を前方に固定することで気道を広げる方法です。軽症の患者様に適しており、比較的簡単に始められます。
③ 外科手術
扁桃肥大や軟口蓋の形状異常などが原因で気道が狭くなっている場合、外科手術によって気道を広げることが可能です。
④ 生活習慣の改善
特に、肥満は気道の狭窄を引き起こす要因となるため、適正な体重を維持することが大切です。さらに、アルコールの過剰摂取は筋肉の緊張を緩め、気道を塞ぎやすくするため、適度な飲酒を心がけましょう。禁煙も有効であり、喉の炎症を抑え気道のむくみを軽減する効果があります。適度な運動を取り入れ、規則正しい生活を送ることで、睡眠の質を向上させることが期待できます。